消費科学研究所
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魚介類の適正な衛生管理で、食中毒対策を

食品

2017年9月26日

1.生の魚介類には、食中毒の原因となる細菌やウイルスが付着していることがあります

海や河川には、食中毒の原因となる腸炎ビブリオなどの細菌やノロウイルスなどが存在し、それらの細菌やウイルスに魚介類が汚染されていることがあります。 また、魚介類は変質・腐敗が起こりやすく、その際に作り出されるヒスタミンという物質による食中毒も発生しています。
 
■魚介類の食中毒の原因

原因物質 主な魚介類の種類
腸炎ビブリオ 海洋性の魚介類
ノロウイルス 二枚貝
ヒスタミン 赤身魚(マグロ・サンマ・サバ・イワシなど)

 
①腸炎ビブリオ
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海洋性の魚介類のエラや表面に付着している細菌です。魚介類を調理したまな板や調理器具、手指から二次汚染を引き起こします。
<予防方法>
・低温(0~4℃)で保存する
・魚介類は、水道水の流水でよく洗い流す
・加熱調理する場合は、中心温度65℃で1分間以上
 
②ノロウイルス
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カキなどの二枚貝を生食または加熱不足で食べるとノロウイルス食中毒を引き起こします。また、感染した人の手指を介して二次汚染が拡大します。
<予防方法>
・カキなどの二枚貝は生食を避け、カキフライでも中心温度85~90℃で90秒以上加熱する
・清潔な使い捨て手袋を使用する
・手洗い、うがいを励行し、健康管理(検便を含む)を徹底する
 
※ノロウイルス食中毒対策についての詳細は、過去のブログ<2015年09月14日(月)>でも取り上げていますので、ご参照ください。
 
③ヒスタミン
細菌(ヒスタミン生産菌)により、魚体中のタンパク質が分解され、アミン類(ヒスタミン、アグマチンなど)が蓄積して起きる食中毒です。見た目の変化や悪臭を伴わないため、食べる前に感知することは非常に困難です。また、一旦ヒスタミンが産生されると、加熱調理してもなくなりません。
<予防方法>
・赤身魚(加工品も含む)は常温で放置しない
・冷蔵でも長期間の保管は避ける
・冷凍した赤身魚を解凍するときは冷蔵庫で解凍する
・冷凍と解凍の繰り返しは避ける
 

2.魚介類の寄生虫による食中毒にも注意が必要です

■食中毒の原因となる寄生虫

寄生虫 魚介類の種類
アニサキス サバ、サンマ、カツオ、イナダ、イワシ、イカ、アジなど
クドア・セプテンプンクタータ ヒラメ
旋尾線虫 ホタルイカ、ハタハタ、タラ、スルメイカなど

 
①アニサキス
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アニサキスは魚介類の内臓に寄生していますが、鮮度が落ちると内臓から筋肉に移動するため、それを生で食べることにより食中毒を起こします。
<予防方法>
・新鮮なものを選び、速やかに内臓を取り除く
・60℃で1分間加熱または70℃以上で加熱する
・マイナス20℃で24時間以上冷凍する
・魚の内臓を生で提供しない、食べない
・目視で確認して、アニサキスの幼虫を除去する
※一般的な料理で使う程度の量や濃度の塩・わさび・酢などでは、アニサキスは死滅しない
 
②クドア・セプテンプンクタータ
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ヒラメの筋肉に寄生するクドア・セプテンプンクタータという寄生虫による食中毒です。9月~10月に多発する傾向があります。
<予防方法>
・マイナス20℃で4時間以上冷凍する
・中心温度75℃で5分間以上加熱する
・検査で「クドア陰性」と確認されたヒラメを使用する
 
③旋尾線虫
ホタルイカの消化管に寄生しているため、ホタルイカ漁解禁の3月~8月、特に4月~5月に多く発生します。ホタルイカを生で内臓ごと食べる「踊り食い」などが主な原因です。
<予防方法>
・加熱する(沸騰水中で30秒以上浸漬または中心温度60℃以上で加熱)
・マイナス30℃で4日間以上冷凍する
 

3.下処理で菌を取り除き、増殖させない

魚介類のエラや表面に付着した菌やウイルスをしっかり洗い流し、水分がたまらないようにして、速やかに冷蔵または冷凍します。
 
・魚は頭か尾を持ち、腹をつかまない(体温で劣化するため)
・流水(水道水)で、魚のエラや表面をよく洗って菌を洗い流す
・ウロコ、エラ、ワタ(内臓)を取り除き、よく洗う
・魚から出る水分がたまらないように、網すのこを敷いたバット等に入れ、ラップで密封し、冷蔵庫で保管する
・魚を冷凍する場合は、薄い切り身にして1枚ずつラップで包み、冷凍にかかる時間を短くする
 

4.厨房での二次汚染を防ぐ

他の食品に細菌やウイルスが付着すると、食中毒の原因になります。
 
・魚介類とその他のまな板や包丁を使い分ける
・使用した調理器具類は、十分に洗浄した後、熱湯や塩素系殺菌剤などで消毒して二次汚染を防ぐ
・生魚を冷蔵庫で保存する場合は、他の食品を汚染しないように、別々に保管する
・手指の洗浄・消毒を徹底する(必要に応じて使い捨て手袋を使用する)
 

5.室温放置は厳禁! 必ず冷蔵庫へ

・わずかな時間でも冷蔵庫で4℃以下にて保存する
・生食用のものは、その日のうちに食べきる
・加熱調理する場合は、中心部まで十分に加熱する
・冷凍した魚介類を解凍する際は、冷蔵庫内で行う
 
魚介類をはじめ生鮮食品の取り扱い指導のほか、事業所内の衛生管理、厨房点検等も実施していますので、ぜひ気軽にご相談ください。

 


 

参考資料/東京都福祉保健局ウェブサイト