消費科学研究所
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髪のすべりやすさ、なめらかさを測定し、ヘアケア製剤の開発をサポート

ヘアケア・化粧品

2017年3月29日

消費科学研究所では、さまざまな毛髪試験を実施し、ヘアケア製剤の性能を評価しています。(①2015年10月ブログ2016年10月ブログ2017年1月ブログ参照)
今回は、それらの試験の中から、測定機を使用した「毛髪表面特性試験」について紹介します。
 

1.毛髪表面特性試験とは?

毛髪の「摩擦係数の平均値(MIU):すべりやすさ」と「摩擦係数の変動(MMD):なめらかさ・ざらつき」を測定する試験です。
コンディショナーやトリートメントなどのヘアケア製剤で処理した毛髪や、ダメージを受けた毛髪について試験を行うことで、その違いをわかりやすくデータ化(見える化)します。たとえば、洗浄のみを行った毛髪と、洗浄後にリンス~トリートメントを行った毛髪の2種類を測定すると、洗浄のみの毛髪の方がすべりにくいことが数値化されます。
 

2.試験方法

毛髪のキューティクル方向をそろえて、スライドグラス上に1㎜間隔で並べて測定用サンプルを作ります。試験機に測定用サンプルをセットし、毛元から毛先の方向に向けてセンサーをすべらせて「摩擦係数」を測定します。
ちなみに毛髪以外にも、ファンデーションを塗る時のすべりやすさを評価するのに、この試験機を使用することもあります。
 
写真①:試験機器
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写真②:測定用サンプル
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※毛髪サンプルの作製~測定は、室温20℃、相対湿度65%の環境下で行います。
 
測定時に用いるセンサーは2種類あり、試験対象の状態や用途によって使い分けます。ピアノワイヤーセンサーはシリコンセンサーと比べてサンプル表面の凹凸を捉えやすいため、詳細な表面の凹凸データを得たい場合はピアノワイヤーセンサーを使用し、それよりも指で触れたときの感触に近いデータを取りたい場合はシリコンセンサーを使用します。
 
写真③:シリコンセンサー
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ピアノワイヤーセンサーと比べてすべりにくい素材のため、MIU(すべりやすさ)が高く出やすい。
 
写真④:ピアノワイヤーセンサー
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シリコンセンサーと比べてキューティクルの凹凸を捉えやすいため、MMD(なめらかさ・ざらつき)が高く出やすい。
 
試験の様子

 

3.試験結果と評価方法

●試験結果:測定値のみかた
毛髪表面特性試験は、試験品表面にセンサーをすべらせ、摩擦係数を測定します。そのうち、すべらせ始めと終わりを除いた部分の摩擦係数の平均値をMIU、摩擦係数の変動をMMDとして算出します。
 
説明イラスト(アニメーション)
 
・摩擦係数の平均値(MIU)
  =すべりやすさを表します。この値が低とすべりやすく、高いとすべりにくくなります。
・摩擦係数の変動(MMD)
  =なめらかさを表します。この値が低いとなめらか、高いとざらつきます。
 
●評価(例)
○リンス・コンディショナー処理なし…MIU:0.338 、MMD:0.0024
○リンス・コンディショナー処理あり…MIU:0.300 、MMD:0.0020
   結果の数値は説明用です。実測値ではありません。
 
⇒「リンス、コンディショナーをした方がすべりやすく、
  なめらかになる」と評価できます。

 

4.シャンプーやコンディショナーなど、ヘアケア製剤の開発に

毛髪の試験では、主にサンプルを比較して行う試験方法が一般的で、毛髪曲げ特性試験(曲げ剛性、曲げヒステリシスの幅)や毛髪引張特性試験(破断加重、延伸率)も、同様に比較試験を行います。サンプルが複数あれば、1つずつ順次測定して結果を比較します。
ヘアケア製剤の開発時、複数の試作品から絞り込みを行う際などに、さまざまな角度から毛髪を評価できる比較試験が大いに役に立ちます。
毛髪表面特性は、風合いを構成する物性のうちの一つです。より細かな毛髪表面の状態を観察したい場合は、SEMによる表面観察も併せて実施することをおすすめします。
 

 

○ご依頼時の注意点
・試験に用いる毛束は弊社でも手配できますので、試験品のみお送りいただいても実施可能です。(処理した毛髪のみ、または毛束と試験品をお送りいただいても実施可能です。)
・送付時は、毛髪を折り曲げない、つぶさないようにしてお送りください。
・コンディショナーなどの試験品はこぼれないように、また、容器が破損しないようにしてお送りください。